この度、「第124回日本小児科学会学術集会」を2021年4月16日(金)~18日(日)の3日間、国立京都国際会館で開催させていただくことになりました。当教室では、1948年終戦後混乱期のなか斎藤二郎第3代教授が第51回日本小児科学会総会を、その59年後の2007年には先代の杉本徹第7代教授が第110回学術集会を開催されました。後者では私も教室スタッフの一員として貴重な経験をさせていただきました。そのわずか14年後、自らが会頭して主催させていただくことになるとは、正直のところ、お話をいただくまで考えてもおりませんでした。巡り合わせとは言え、このような歴史と伝統ある学術集会を主催させていただくことは教室としてもこの上ない光栄と関係者各位、会員の皆様、また教室の諸先輩方、教室員に感謝しております。
学術集会のテーマは「Children First 子どもから創めよう新時代」といたしました。チルドレン・ファースト、それは単に「子どもはとにかく最優先」と言う意味ではなく、「子どもの医療や教育のあり方を通して、医療や社会のあり方を考えていくことこそが、将来のすべての医療やよりよい社会づくりにつながる」というメッセージを込めています。小児科学は、子どもの体や心のしくみとその異常を、子どもを取り巻く環境も含めて、全人的に研究する学問であり、小児医療は、その応用により、子どものみならず、人の一生を見つめ、人と社会に働きかけていく医療であります。我々、 小児科医をはじめ、小児医学・医療・保健に関係する全ての職種の使命は、健康な子どもたちの疾病を予防し、その健康を守り、心身ともに健やかに育てていくことであることは言うまでもありません。一方で、病気や障がいをもった子どもたちに真摯に向き合い、難病の病態を解明する基礎医学研究、その結果を応用した診断や多診療科・多職種による集学的治療を推進していくこと、そして家族・教育者・行政など社会全体を巻き込んだトータルケアによって、より良い地域づくり・町づくり・国づくりに貢献していくことも、我々の使命であります。その意味で、小児科学・小児医療は、やがて成人し、高齢者となっていくすべての人々のための、明るい未来づくりの出発点と言っても過言ではないと思います。
全世界の人々が未曽有の困難を克服した新時代の幕開けに、子どもの医療・研究・教育・行政のエキスパートらが交流する場として、また若手小児科医がリクルートされ、育成される場として、本学術集会が少しでもお役に立てば幸いです。
春の京都でお待ちしております。